
1. コーン油の紹介
コーン(とうもろこし)は日本でも馴染みのある食べ物であり、米、小麦と並んで世界の三大穀物と言われるほどメジャーな食べ物です。世界での生産量は約8億5千万トンにもなり、様々な用途で使用されています。※ちなみに日本での2008年お米の生産量は約850万トンなので、とてつもない生産量なのがわかりますね。
日本では料理の付け合せとして食べる機会の多いコーンですが、南米などでは主食として扱われています。また、コーンスターチなどの加工品や、バイオエタノール、家畜の飼料としての需要も世界では非常に大きいのです。
そんなコーン(とうもろこし)からも油は抽出できます。
コーン油はトウモロコシからコーンスターチを製造する際に分離した胚芽を原料としており、(米油が玄米を精米するときに副産物として発生する米ぬかを原料としているのに近いですね)コーン産業の副産物的な代物であると言えます。
実は日本のコーン油の年間供給量は約8万トンであり、アメリカ(70万トン)、中国(20万トン)に次いで(随分差はありますが)世界第3位なのです。
スーパー等でも植物油としてお店の棚に並んでいますし、また加工油脂としてマーガリンのパッケージにコーンのイラストが入っているのを思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか?
コーン(とうもろこし)の風味がほんのり香るコーン油は日本人好みで、もっと人気が出ても良いような気がしますが、そこまで普及はしていません。
その理由として、
①原料のコーンから摂れる油の量が菜種油や大豆油のように多くないこと。
(同重量の油分量が大豆の3分の1~4分の1程度)
コーン油は胚芽(植物の種子の中にあって、生長すると芽になる部分)から作るのですが、その胚芽の油分含有量は約50%。とうもろこし全体だと5~6%程度にすぎません。
②①とも関わるのですが、その為、コーン油は菜種油や大豆油よりも2~3割ほど高い価格設定となっていること。
という2点が主な理由です。
なので、当サイトを見ていただいている方ならピンときたかもしれませんが、①の状況下で搾油をしようと思うと、どうしても溶剤抽出法がメインの製法となります。
基本的にコーン油はコーンスターチを作る際の副産物であり、絞りカスに残っている油分を薬剤を使って無駄なく抽出するのが一般的な方法です。(溶剤抽出法はMAXで99%の油分が抽出可能です)。
しかし、その工程で高温加熱処理や薬剤精製により、コーン油に含まれる栄養素は破壊されてしまいます。
また、200℃を超える加熱では、有害とされるトランス脂肪酸が発生してしまう為、油に含まれる栄養素を保ち、トランス脂肪酸を発生させないようにするには低温で搾油をする低温圧搾法しかありません。しかし、そのようなプレミアムコーン油はなかなか流通していないのが残念で仕方ありません。
2. コーン油の基本情報
2-1. 日本の「年間供給量」
コーン油の供給量:77,923トン(日本の植物油では6位の供給量)
2015年 農林水産省「油糧生産実績調査」 財務省「通関統計」
国内生産量が82,256トンで、海外への輸出入の差分が4,333トンなので、珍しく輸入量より輸出量が多い油なのです。※輸入量より輸出量が多い油はコーン油とごま油のみ
5位の米油との差はわずか10,000トンで国内生産量ではコーン油のほうが多い。
2000年の総供給量は93,268トンなので供給量はこの15年で17%の減少となります。
輸出入量はほぼ横ばいなので、単純に国内の生産量が減少しました。背景には原材料価格の高騰が見受けられます。
参照:2015年 農林水産省「油糧生産実績調査」 財務省「通関統計」
2-2. 含有脂肪酸
参考:日本油脂検査協会
リノール酸とオレイン酸で約85%という典型的な植物油の脂肪酸構成になっています。※特にリノール酸(C:18/2)の含有量が約56%と非常に多く、次にオレイン酸(C:18/1)が27%と不飽和脂肪酸の割合が非常に高いのが特徴です。
リノール酸が多いので、摂り過ぎには注意が必要です!
2-3. 抽出方法
溶剤抽出法、水蒸気圧搾
コーン(とうもろこし)の油分は5~6%と非常に少ないため、多くは溶剤抽出法が使われます。
また、そこから漂白や再着色をするケースもあるので選定には注意が必要です。
2-4. 特徴と酸化
①酸化には強いが加熱にはあまり向かない
ビタミンEが豊富に含まれるため、酸化には強いですが、リノール酸が50%以上なので、取り過ぎには注意が必要です。(ビタミンE含有量は100g/0.014g)
※ちなみに米油はその倍以上の100g/0.037gです。
②ほぼ遺伝子組換えの原材料を使用している
詳しくは下記のうんちくコーナーにて!
③様々な用途で使用が可能である!
コーン油はリノレン酸含有率が低く、光酸化の原因となるクロロフィルが含まれないため貯蔵安定性に優れ、家庭用サラダ油として揚げ物・炒め物などに、加工油脂や食品工業用としてマーガリンやスナック菓子などの製造に用いられます。
2-5. 推奨使用方法、耐熱温度
発煙点 230℃前後、引火点 315℃前後
炒め物・天ぷら・ドレッシング・スープやアイスクリームに加える
高温の料理にも使用可能な油です
2-6. うんちく
何と言っても、コーン油に関しては、原材料が遺伝子組換えものなのか?という点と、その搾油方法・精製方法が気にするべきポイントでしょう。
日本は世界でも上位のとうもろこし輸入国です。その8割以上は生産大国のアメリカからのものになります。 アメリカ産の農作物は遺伝子組み換えされたものが大半のため、必然的に日本で販売されているコーン油には遺伝子組み換えのとうもろこしが使われている可能性が高いと思われます。
それに関して、ある大手の油メーカーのHPにQ&Aが載っていたので、転載します。
Q:原料に遺伝子組み換え作物を使っていますか?
A:遺伝子組み換え作物の中で、植物油の原料となっているものは「大豆・なたね・とうもろこし・わた(綿実)」です。 当社では、国が認めたこれらの植物油の原料を、海外から輸入しています。遺伝子組み換え作物と、従来からの遺伝子組み換えではない作物とを区別せずに扱われている、遺伝子組み換え不分別の作物を使用しています。
とありますので、暗に「遺伝子組み換えコーンを使ってます」と言っていますね。大人の回答ですね。
もちろん、遺伝子組み換え作物が体に影響をもたらすかどうかはまだわかりませんが、中にはコーンと昆虫とを遺伝子操作して出来た新型のコーンもあるようなので、(その昆虫に食べられないようにするため)注意するに越したことはないですね。
アメリカにおける穀物産業は一大産業なので、非常に力(権力)を持っています。もちろん、その力の影響範囲内に日本がいることは想像に難くないでしょう。大衆に正直に自分たちに都合の悪い事をそうそう言うとは思えないので、自衛が必要だと私は考えます。
リノール酸がちょっと多いのは気になるものの、風味や使い勝手を考えると本当のプレミアムコーン油を是非探していきたいと油マニアの私などは考えてしまいますね。
3. コーン油の商品情報
炒め物料理1回に必要な油量を大さじ一杯(15ml=13.5g)という前提。
内容量/ 酸化する前に 使い切る |
600g | ✕ |
---|---|---|
購入価格/ 購入し易さ |
420円(税込) | ○ |
単価/コスパ (13.5gあたり) |
9円 | ✕ |
原材料/安全性 | 食用とうもろこし油 | ✕ |
抽出・精製方法/ 安全性 |
溶剤抽出法 | ✕ |
容器/ 安全性・保存性 |
プラスチック容器 | ✕ |
総合評価 | ★☆☆☆☆ |
コーン油自体がそもそも家庭用としては珍しいのですが、本文中にも書いたように、製造法や原材料等を考えるとどうしても安かろう悪かろうの側面を意識してしまいます。わざわざこれを使わなくても良いかも知れません。