
1. 糖尿病ってどんな病気?
糖尿病とは、「糖質の代謝異常」によって引き起こされる病気です。
私たちが毎日の食事でごはんやパン、麺などの糖質を食べると、唾液、膵液、腸液によって消化・分解されブドウ糖に変わります。
ブドウ糖は、腸から吸収されて血液中に入り、全身でエネルギー源として利用されています。この時に体内で活躍するのが、すい臓から分泌されるインスリンとグルカゴンの2種類のホルモンです。
インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込んだり、余った分をグリコーゲンに変換して肝臓に戻したりする働きがあります。
これに対して、必要に応じて肝臓に貯蔵していたグリコーゲンをブドウ糖に変換して、血液中に放出するのがグルカゴンの役割です。
このように、通常であれば血液中にブドウ糖はほぼ均一に保たれて、活動エネルギーが枯渇しないような仕組みに私たちの体はなっています。(良くできている!)
ところが、ブドウ糖を細胞内に取り込んだり、余剰分を肝臓に戻す働きのインスリンの分泌が少なくなったり作用が十分でなかったりすると、ブドウ糖が有効に使われなくなったり、血液に含まれるブドウ糖の量が異常に多くなってしまいます。
これがいわゆる「血糖値が高い」という状態ですね。
※血糖値の高い血液は、血管を傷つけ、特に細かい血管が集中している末梢神経や、腎臓、目の網膜などをはじめ、全身で障害を引き起こします。
この状況(血糖値が高い状態)が慢性的に続いてしまうことが糖尿病という事です。
2. 厚労省発表の2015年《糖尿病実態調査》
厚生労働省が2015年に発表した「患者調査」によると、糖尿病の患者数は316万6,000人となり、前回(2011年)調査の270万から46万6,000人増えて、過去最高となりました。
※糖尿病だと診断されいている人数はおよそ950万人、その内の患者数が上記数字。
予備軍をあわせるとおよそ2,100万人とも言われていて、成人人口の3~4人に一人は糖尿病の疑いがあるというとんでもない数字が出ています。
その糖尿病の医療費は2015年度で1兆2,076億円でした。
※ちなみに2015年の国民医療費は40兆610億円で、前年度の39兆2,117億円に比べ8,493億円、2.2%の増加という結果になりました。人口一人当たりの国民医療費は31万4,700円、前年度の30万7,500円に比べ2.3%増加しています。
3. 糖尿病がこの20年で急増中!?
1997年の初めての糖尿病実態調査の段階で1,300万人強の糖尿病患者(予備軍)が実にそこからの20年で60%もの増加を見せていることになります。
※その間の日本の人口はなんと約2%増にとどまっています。
なぜ糖尿病がこれほどまでに急増したのでしょうか?
糖尿病というと「飽食になって糖質を摂り過ぎだから」とか、「お酒を飲みすぎたから」というようなイメージがありますよね?
ただ、ここではやはり油(脂)について考えていきます。
※油(脂)の情報サイトなので。
先程、糖尿病患者数(予備軍含む)の推移表を御覧頂いたと思いますが、糖尿病だと思われる人はこの20年で右肩上がりです。同じように増加しているが植物油の消費量です。
糖尿病のように近年急増した病気の背景には、上記のような油の摂取量の増加が一因であると私は考えています。
※ちなみに1960年に糖尿病と認定されている人の数はわずか20万人と2012年が950万人に対して、45分の1という驚愕の事実があるのです。
4. 糖尿病にも油(リノール酸やトランス脂肪酸)が関連している!?
油はブドウ糖に変わらないため血糖値上げることはしませんが、リノール酸やトランス脂肪酸は血糖値を下げさせないという働きがあるので注意が必要です。
では、油と糖尿病の関係を時系列で見ていきましょう。
① 日々の食事の糖分から分解されたブドウ糖は小腸で吸収される。
② 小腸がすい臓にインスリンと言う血糖値を下げるホルモンの分泌を促す。
③ インスリンは肝臓にブドウ糖を蓄積させる。
④ 筋肉のエネルギー源としてブドウ糖取り込ませ活動のすることで血糖値を下げる。
これが正常な姿です。しかし、過剰な糖質摂取やきちんとした①~④のフローが行えないと、次の⑤~の状態になります。
⑤ エネルギー源として使いきれなかったブドウ糖は中性脂肪に変えられる。
⑥ それらは筋肉や皮下脂肪、お腹の脂肪組織(中性脂肪)などの貯蔵庫に蓄えられる。
ここからがポイントなのですが、
① 貯蔵庫である肝臓が中性脂肪で満タンになっている。
② インスリンが肝臓にブドウ糖を蓄積させるように働きかけたとしてもすぐにブドウ糖を取り込むことが出来ない。(肝臓が満タンなため)
③ インスリンの働きかけに応答が鈍くなり、本来の役割を果たせず血糖値が高いままの状態。
これが糖尿病のメカニズムなので、インスリンが働くためには貯蔵庫(肝臓)に十分な空きが必要なのです。
ここで、油との関係性なのですが、リノール酸を始めとした長鎖脂肪酸はなかなかエネルギーとして使われない(消化されづらい)という特徴があります。
それは、人類が進化する過程で油(脂肪酸)は長期間体内で貯蔵可能な効率的エネルギー源として大切な役割を担っているからです。
※糖質は24時間程度の保存期間ですが、油(脂肪)は蓄えておいて、いざという時(食べ物が出に入らない状態)にエネルギーとして使うというそれぞれの役割があるので貯まるのは仕方のないことなのです。
このようにリノール酸は中性脂肪に形を変えて、貯蔵庫(肝臓)を専有したままどんどん溜まっていきます。
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同じ植物油の脂肪酸でも優先的にエネルギー源として消えていく中鎖脂肪酸やリノレン酸(オメガ3脂肪酸)とは対照的なのです。
また、同様の理由で、マーガリンやショートニングに代表される加工油脂に多く含まれるトランス脂肪酸も細胞膜の構造を不安定にするため、いくら体がインスリンを分泌しても、それをキャッチする細胞膜の受信機能が鈍くなっていきます。
その為、インスリンの働きが損なわれてしまい、結果的に血糖値が上がってしまうというのはリノール酸と同様です。
このような理屈でリノール酸やトランス脂肪酸は糖尿病を招く一員となっているのです。
遺伝的にインスリンをつくれない糖尿病を、Ⅰ型糖尿病というのに対して、上記のように体内ホルモンのインスリンが適切に作用しないタイプをⅡ型糖尿病といいます。
そして、日本で、世界で急増しているのはこの「Ⅱ型糖尿病」なのです。実に、日本の糖尿病患者の9割以上がこの「Ⅱ型糖尿病」となっています。
5. まとめ
いかがでしょうか?
一見、何の関係もなさそうな糖尿病と油(脂)ですが、ブドウ糖を取り込む機能や、インスリン(ホルモン)の出している信号をキャッチできない細胞膜であったらいくら体がインスリンを分泌しても血糖値は上がってしまいますよね。
日本の9割以上がⅡ型糖尿病という事なので、細胞が弱ったことによって糖尿病という大きな病気にかかってしまっている人が、なんと280万人もいるという事になりますね。
もちろん、先天性糖尿病の方はお気の毒なのですが、その人数が30万人という事は、日本の人口のおよそ0.2%という事なので、軽度・重度という概念がある病気という事を加味すればありえない数字はないですね。
それよりも糖尿病のほとんどがⅡ型という事実に驚きます。
という事で、糖尿病になりたくなければ節制・運動ももちろんですが、油(脂)にも気を付けていきたいですね。